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『映画ドラえもん のび太の新恐竜』

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画像引用元:(c)藤子プロ・小学館テレビ朝日・シンエイ・ADK 2020

 

こんにちは。先日『映画ドラえもん のび太の新恐竜』を観てきました。泉楓です。

 

……え?子どもっぽい?

 

いえいえ。この映画は「ドラえもん50周年記念」として製作されているだけに、子ども向けながら、幼い頃からドラえもん関連作品に親しんできた大人たちこそ楽しめる作品だと言えると思うのです。

 

*ちなみに今作は、ドラえもん長編映画シリーズとしては40作目。第1作目はいまから40年前に製作された『映画ドラえもん のび太の恐竜』だそう。メモリアル!

 

子どもたちの付き添いのつもりで映画館を訪れた大人が思わず泣いてしまったアニメ映画と言えば『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』がまず初めに思い浮かびますが、本作もなかなかの強者。かく言う私もめちゃくちゃ楽しみました。

 

なので今回は『映画ドラえもん のび太の新恐竜』を大人の視点でレビューしたいと思います。「この作品は大人も観るべき作品だ」という理由を3つ挙げることで、本作品の魅力を掘り下げていくつもりです。それでは、本編です。

 

(以下ネタバレを含みます)

 

https://youtu.be/PbINQ0HV158

 

理由1 懐かしさ 定番の展開とお約束 

 

物語の前半は『のび太の恐竜』と同様に、のび太が恐竜の卵を発見するところから始まります。ジャイアンスネ夫からのいじめ、「恐竜の化石を見つけてやる!」と大口を叩くのび太、たまたま見つけた卵の化石、それをひみつ道具「タイムふろしき」で包んでみると……!

 

漫画版ドラえもんから現代のアニメ版ドラえもんまで引き継がれたベタな展開とキャラクターの個性が存分に盛り込まれています。

 

物語の主役、ドジで間抜けだが、純粋で勇気のあるのび太のび太を導き、物語を動かすドラえもん。「のび太のくせに」と言いつつ、冒険の匂いを嗅ぎつけると目の色の変わるジャイアンスネ夫。「のび太さん」を見守り、寄り添うしずかちゃん。

 

「追い込まれたドラえもんが慌てて取り出した道具は見当違いのガラクタである」という伝統のギャグシーンをはじめ、ドラえもんシリーズに親しみのある方なら誰もが懐かしさに顔をほころばせてしまう要素がテンポよく展開されていきます。

 

本作の特筆すべき部分は、卵から生まれた恐竜が双子であり、腕に羽毛が生えた新種の恐竜であること。そして双子のキュー(♂)とミュー(♀)のうち、キューは発育が未熟であるということです。このことが本作の問いかけであり、観賞する際の多様な視座を用意していることは明らかでしょう。

 

のび太が彼らを育てるなかで、彼らはその羽毛のついた腕を広げ、滑空するという飛行能力を持っていることがわかります。活発で身体も大きく、元気に飛びまわるミューに比べて、臆病で身体が小さく羽毛も未発達なキューはうまく飛べません。

 

*おそらく尻尾が短いことも飛べない原因のひとつ。キューと同じ種の恐竜は、尻尾を伸ばしその先端に生えた大きな3対の羽毛で飛行中に体勢を制御しているものと思われます。

 

不器用なキューに自分に似た影を見出したのび太は、母親のような思いで世話を焼くようになります。のび太はキューがうまく飛べるようになるために、様々な工夫をこらして練習を助けてあげますが、なかなか思うようにはいきません。キューは次第に飛ぶ練習を忌避するようになり、懸命なのび太とのすれ違いをみせます。

 

ドラえもんから飼育の限界を指摘され、キューとミューを彼らの仲間が生きているであろう白亜紀に返すことを決心するのび太でしたが、与えられる世話に依存し甘えてくる未熟なキューが、はたして野生の世界で自立できるのか?という不安を密かに抱きはじめていたのです。

 

恐竜の世界を冒険する一行は、様々な困難をドラえもんひみつ道具でなんとか切り抜け、ついにキューの仲間を見つけることに成功しました。しかしキューは群れに馴染めないだけでなく、一際身体の大きいオスの個体から威嚇、攻撃されてしまいます。

 

*キューの仲間である新種の恐竜は群れで子育てをするのではなく、オスとメスでつがいを組み、木の上に鳥の巣のような場所を作って子育てをするようです。彼らにとって飛べないということは、子育てができないだけではなく、自分の餌も取れなければ、外敵から身を守ることもできないということ。キューを群れから排除しようとする描写は、彼らが他の恐竜と比べて高い知能と社会性を持っているということを暗に示しているのだと思われます。

 

「弱いからって仲間外れにするなんて……そんなの……酷すぎるよ!」

 

キューに対して彼の弱点を指摘し、激励するのみであったのび太は、野生の世界で生きていくことの厳しさを噛みしめた後、キューに寄り添うように自らの態度を改めます。

 

のび太とキューが肩を並べて飛ぶ練習を繰り返すシーンはとても感動的です。その頭上を巨大な隕石が禍々しい光を放ちながら流れていきます。一行はここが6600万年前、恐竜が絶滅する直前の白亜紀であることに気が付きます。運命の歯車は止まることなく回ってしまうのです。

 

今回はここまで。時間と体力の限界が故に、本来ひとつの記事にまとめるべきところを、今回を含めた前編と後編にわけさせていただきますことご容赦ください。なるべく早く後編が更新できるように努力します。

 

『映画 ドラえもん のび太の新恐竜』は大人も観るべき作品だ。理由の残り2つをここに示しておきます。

 

理由2 アニメーション 動きで表現する生命の羽ばたき

 

理由3 テーマ性 物語が深めるメッセージ

 

次回も是非、ご期待ください!