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金曜日更新のおはなし

生物の進化について

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小さい頃から水族館や動物園に行くのが大好きでした。こんにちは、泉楓です。今回は「生物の進化」がテーマということで、まずは身近な動物から注目してみたいと思います。

 

身近と言っても僕が話したいのは現代に生きている動物の話。「キリンの首はどうして長いか?」という問いはあまりにポピュラーですが、純粋な子どもの素朴な疑問の前で、私たち大人はその威厳を保つことができるでしょうか。

 

「高いところの植物の葉を食べるためだよ!」

 

……残念!これでは無垢な子どもに誤った認識を与えてしまうことになります。しかしながら、この答えは"目的論"的な捉え方と言え、長きにわたり人類の一般常識として働いていた考え方です。間違えてしまうのも仕方のないことかもしれません。

 

私たちの感覚としては、生物が何かの目的に従って存在していると考えることは自然な運びかと思います。実際、キリンの長い首は「高いところの植物の葉を食べること」に役立っているので、完全に誤解とも言い切れません。ただ少し本質とはズレているのです。

 

初めから「首の長いキリンがいた」のではありません。キリンの仲間の中から首の長い個体が生じ、悠久の時を経て現代の「キリン」という種には「首が長い」という特徴が残っている、というのが正しい認識だと思います。

 

「首が長い方が生存競争で有利だった」という言い方もありますが、私の認識としては正しくありません。前回の記事でも言及した「ミッシングリンク(失われた鎖)」の問題はここに表れてきます。ある集団(群)の中で生存競争があり、生き残ったものが進化を繋いでいく、という捉え方では説明のできない事実がたくさんあります。それに私の直感としては、「極端な特徴を持った生物が緩やかな変化を経てきた結果だ」とするのは少し無茶だという感じがします。

 

生物の進化については、未だに解らない事柄がたくさんあります。数ある仮説のなかで「生物の進化には『環境的要因』が大いに関わっているのではないか」という説が私としても納得のいくものだと思いました。

 

「私たちの身体はDNA(デオキシリボ核酸)によって遺伝情報を伝達している」という話は聞いたことがあるでしょう。そんな有名な二重らせん構造の中に、"生命の設計図"が記憶されています。驚くことにその"レシピ"の内容は既に知られている生物でほぼ共通しており、ヒトの遺伝子はその98%がチンパンジーと、85%がネズミと、60%がニワトリと、50%以上が多くの細菌と同じだと分かっているそうです。

 

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「この数字は何を示しているか」というと、既知の生物は皆、共通の祖先を持っているという事実でしょう。実際、生物の身体を構成するアミノ酸は20種類だと言われていますが、天然のアミノ酸は約500種類ほど見つかっています。それほどまでに生物の身体には共通する要素が多いのです。

 

「進化」とはこの共通のなかに生じた僅かな差異が表出したものだと言えるでしょう。では、その差異はどのようにして生じたか。DNAがmRNA(メッセンジャーRNA)に塩基配列を「転写」し、それぞれの細胞で「コード」を読みとってタンパク質を合成するという過程で、「バグ」が発生するのかもしれない。また、放射線によってDNAが傷付けられ突然変異が起こったという説も一定の信憑性を持って語られているらしい……。

 

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上の図は大陸の分裂、衝突を考慮した進化の模式図です。大陸の分裂の際には大地の裂け目から放射線が放出し、変異体を生む。大陸の衝突では、これまで交わることのなかった個体同士が交配し、遺伝子の差異を増幅する。それぞれ「茎進化」「冠進化」と呼ばれているらしく「ミッシングリンク」の問題を解決するための考え方のひとつとして、私は面白い考え方だなと思います。

 

  • 最初の生命

 

前述した文章の中に「共通の祖先」という言葉が出てきました。細菌と私たち人類の間に「共通の祖先」がいるだなんて到底理解の及ばないことではありますが、次はそんな不思議な世界(なのに現実)について考えてみます。

 

遥か昔にビッグバンが起こり、その塵が固まって出来たというこの地球。彼が産まれたての頃(46億年前)には大陸がなく、雲に覆われている今とはだいぶ印象の違った惑星だったと言います。45億5000万年前には小惑星の衝突で月ができ、その後も地表には大量の微惑星が衝突していたと言われています。衝突によって、炭素、水素、酸素、窒素などの軽い元素が持ち込まれ、地球には大気と海洋が生まれました。

 

惑星の衝突跡にはクレーターが生まれ、そこに水が溜まり海洋となります。地球内部は常に高温で流動しており、特に高温の中心部マントルからは、たびたび上昇流が発生しました。マントル上昇流は地殻を押し上げ、地表のあちこちに火山を作ります。特に海洋地殻を押し上げたマントル上昇流は海水によって冷やされ、一帯に薄い玄武岩質の地殻を作りました。押し上げられた海洋地殻は滑るようにして移動し、より密度の低い大陸地殻にぶつかると下へ潜り込むように移動を続けます。このような地殻の動きを「プレートテクトニクス」と言います。

 

さて、我々の祖先である原始的生命体は、このような環境でどのように生まれたのか。

 

プレートテクトニクスによって、地表近くには「地殻の裂け目」のような空間が生じました。海洋近くのそのような空間には水が流れ込み、いわゆる「間欠泉」と呼ばれるものを形成します。このような環境下で放射性物質からエネルギーを得て化学反応を起こし、「生命構成単位」と呼ばれる「アミノ酸、リン酸、核酸塩基」が生み出されたと言われています。間欠泉によって水温が上昇し過ぎなかったこと、地表と地下で酸化・還元のサイクルが生まれたこと、、。様々な要素が重なって生命の素となる物質は生み出されました。

 

約41億年前、月の潮汐力は現在よりもはるかに大きく、地表の海岸には理想的な乾湿サイクルが実現されていたと言います。湿った状態と乾いた状態が繰り返される環境下で「生命構成単位」は重合反応を起こし、アミノ酸が複数結合した「オリゴペプチド(触媒活性をもつ、タンパク質様原始物質)」が発生しました。

 

オリゴペプチドがさらに複合し、より複雑な「原始 RNA」へ、原始RNAがさらに複合して、自己複製作用を持つ「リボザイム」として振る舞い始めました。

 

リボザイムが脂質の膜に取り込まれ、外界との境目を持つことで初めて「生物」と呼べる存在となります。この最も原始的な生命体は「原核生物」と呼ばれるようです。

 

 

原核生物は絶滅と繁栄を繰り返す中で、選別された20種類のアミノ酸を自らの組織、エネルギーとして利用するようになったと言われます。この「20種類のアミノ酸を利用した原核生物」こそ、我々の「共通の祖先」だと言えるでしょう。

 

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さて、このように生命の誕生について淡々と語ってきましたが、これは非常に稀な出来事だということは言わずもがなかと思います。未だ地球外に「生命体」と呼べる存在は発見されていません。

 

"生命体はどれだけ稀有な存在であるか"

 

それは著名な物理学者、エルヴィン・シュレディンガーも注目した事実なのです。彼は1943年2月、トリニティーカレッジ・ダブリンで行われた『生命とは何か』という講演でそのことを語っています。

 

彼はダーウィンの理論に対する疑問から「生命とは何か」という問題を提起し、生命を量子物理学の理論で考察してみる必要があると語りました。自然状態から生命が生まれるということは、謂わば「無秩序から秩序」を生み出すということに他ならないと考えたのです。

 

「無秩序から秩序を生み出す」というのは、現代物理学理論のうちの「熱力学第二法則」に背く出来事です。ならば生物の世界には、物理学が未だ到達していない新しい理論、新しい概念があるのではないか。「マクスウェルの悪魔」は生物の世界に息を潜めているのかもしれない!シュレディンガーはこのようなことを示唆しています。

 

現代において、数学や物理学によってあらゆる現象は理論化され、解き明かされていくのか、というように思っている方は少なくないのではないでしょうか。しかしまだまだ謎はたくさんあります。今回はその一例を「生物の進化」という大きな謎を孕んだテーマに沿って、皆さまに紹介できたかと思います。なんとなく息苦しいこの世の中、案外自由に息を吸える空白地帯は近くに存在しているのかもしれませんね。

 

今回はここまで!またね!

 

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